「パワハラ防止法」2020年6月施行。

LGBT自治体議連では、一段高い「SOGIハラ防止」を目指します!

パワーハラスメント(パワハラ)防止を初めて事業者に義務付ける法律(改正労働施策総合推進法:パワハラ防止法)の施行が、いよいよ2020年6月に迫りました。
これを受け、自治体を含む各行政当局においても、厚労省の指針に基づきパワハラの一類型としてLGBTに対するハラスメント (SOGIハラスメント。SOGI(ソジ)は”Sexual Orientation and Gender Identity“ 「性的指向と性自認」の略。読み方は、「ソジハラスメント」または「ソギハラスメント」。略して「SOGIハラ」とも)に防止措置をとることが義務づけられることとなりますが、同指針のSOGIハラスメントの位置づけには偏りがあって、そのままの導入では不十分になってしまうこと、ご存知でしょうか?

厚生労働省では事業者がパワハラを予防・対応するための指針を、2019年12月23日の労働政策審議会(厚労相の諮問機関)で正式決定しています。同指針は職場のパワハラに該当しうる行為について、具体的な内容・解釈も明らかにしており、この中には前述のSOGIハラスメントとなるものも含まれています。

具体的には、「精神的な攻撃」の例として、「人格を否定するような言動を行うこと。相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を行うことを含む。」(ロ (イ) ①)と、「個の侵害」の例として、「労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること」(ヘ(イ)②)の2つが明示されましたが、これだけでは十分な防止措置の担保とはなりません。

問題は、ここで列挙されたSOGIハラが、あくまでパワハラの一類型の位置づけであるために、①優越的な関係が背景、②仕事上、必要な範囲を超えている、③職場環境が害される——の3要件を同時に満たされなければ成立しないという点です。

セクハラやマタハラの成立に、立場の優劣が関係ないように、同列、あるいは立場の劣位の者からの有害、不愉快な言動であっても抑止できる防止措置でなければなりません。

その改善にはSOGIハラをパワハラの一類型におとしめ、その下部構造に留めるのでなく、独立したハラスメントの概念として規定の整備を図ることが求められます。

この考えから、世田谷区では、2020年4月より、「ソジハラスメント」を独立したハラスメントの概念として防止措置の対象に位置付け(世田谷区「職場におけるハラスメントの防止に関する基本方針」)、懲戒処分の対象になることも明示(世田谷区「懲戒処分の指針」)しています。

立場の優劣を問わないSOGIハラスメントの防止措置の導入は、すでに国家公務員を律する人事院規則10-10の2018年2月改訂や、厚労省が民間企業に、その採用を促している「モデル就業規則」の2019年改訂にも盛り込まれているもので、地方自治体だけが取り残されなければならない理由は何一つありません。

世田谷区に類似した規定の整備は、東京都狛江市や東大和市にも見られます。
ぜひ、みなさんの自治体でも、一段高い、「SOGIハラ防止」を目指していきましょう。